はるのおと

あたり一面が桜のはなびらに覆われ、すこしずつはるのおとが聞こえてくるようになった。

昨年の春に生まれた娘は、すこし伸びた髪の毛を逆立てながら、ぐっすりと眠りについている。

彼女は、乾燥でほんのわずかに広がったフローリングの隙間を一生懸命覗き込む。

辿々しい足運びで家中を歩き廻り、カーペットのほつれた、細い細い新芽のような糸屑を引っ張っては喜びの声を上げる。
姿が見えなくなったと思うと、台所の隙間に身体を埋めたり、窓枠に腰掛けて微笑んだりする。
この狭い8畳の家の中でもまったく退屈する様子がない。

言葉や知識を得る前の、この動物的な感覚。

彼女の丸い目に映るのは、ぼくの見ている世界とは違うもの。
その世界のことに静かに思いを馳せながら、また新しい朝を迎える。

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2013.04.01 | ことば

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